文献詳細
特集 神経系に作用する薬物マニュアル
Ⅳ.臨床応用薬
抗うつ薬
著者: 本橋伸高12 高橋清久3
所属機関: 1山梨医科大学精神神経医学教室 2現:広島大学医学部神経精神医学教室 3国立精神・神経センター神経研究所疾病研究第3部
ページ範囲:P.529 - P.531
文献概要
抗うつ薬は偶然に発見された。一つには,抗結核薬であるipriniazidに気分高揚作用が見出され,この薬が抗うつ薬として用いられるようになった。ipriniazidにはmonoamine oxidase(MAO)阻害作用があることから,MAO阻害剤が臨床的に用いられるようになった1)。他方,抗精神病薬の開発中に発見されたimipramineに抗うつ効果のあることが見出された。この薬物にはセロトニン(5-HT)とノルアドレナリン(NA)の取り込み阻害作用のあることが明らかになり,同様の構造を持つ三環系抗うつ薬amitriptyline,clomipramine,desipramineなどが広く用いられるようになった1)。さらに,非三環系の抗うつ薬が開発され,副作用の少なさと速効性を特徴とすることで,数多く処方されるようになっている。これらのなかには,5-HTやNAの取り込み阻害作用がほとんどないものもあり,抗うつ薬の作用機序を考えるのが難しくなっている。わが国で用いられているものでは,四環系の薬物であるmaprotilineとmianserinがあり,また,欧米では,fluoxetine,trazodone,nomifensineなどの薬物が用いられている。現在MAO阻害剤はわが国ではほとんど用いられていない。
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