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文献詳細

雑誌文献

生体の科学42巻6号

1991年12月発行

文献概要

特集 細胞活動の日周リズム

視交叉上核細胞の日周リズム

著者: 井上慎一1 篠原一之1 冨永恵子1 福原千秋1 徳増亜古1

所属機関: 1三菱化成生命科学研究所脳神経高次機能研究室

ページ範囲:P.589 - P.595

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 I.脳のリズム
 脳の細胞は様々な周期的変動にさらされ,また周期的変動を示す。脳から生じている微弱な電場の振動は脳波として知られているが,脳のリズムは脳波にとどまらない。単一ニューロン活動の記録に時々見られるほぼ等間隔のスパイク発射は秒程度のリズムであり,脳の全体的な指標である睡眠・覚醒状態は分単位で交代するリズムを示す。1日のうちで特定の時間に脳の特定の活動が高まったり,特定の種類の行動を誘起したりする現象は日周期のリズムであり,生物個体の季節変動や,年周期のリズムの基礎にはホルモンを支配する脳の活動の年周期のリズムがある。このように脳は周期的に活動を変えることで多様な機能を効率的に果している。
 われわれの研究グループは脳の日周変動,サーカディアンリズムについて研究を続けてきた。それは臨床的な重要性もさることながら,サーカディアンリズムがどの生物にも共通した様式を持ちもっとも普遍的に見られ,その上,性周期のような数日周期や季節変動のような年周期のリズムの基礎にもなっているからである。また脳のサーカディアンリズムは直接行動のリズムと結びついているので行動と脳との関係を理解するプロトタイプとしても重要である。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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