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文献詳細

雑誌文献

生体の科学42巻6号

1991年12月発行

文献概要

解説

老化と吸収に関する最近の知見―形態的・生理的変化から小腸吸収上皮細胞の膜転送まで

著者: 花井洋行1 金子栄蔵1

所属機関: 1浜松医科大学第一内科

ページ範囲:P.639 - P.647

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 年齢が進むにつれ種々の臓器に何らかの加齢の影響を認める。この生理的老化の特徴は緩慢な進行性の機能低下で,これら臓器の実質細胞数の減少を伴い,ヒトの場合約30歳をピークに諸機能の低下が認められる1)とされている。果たして小腸においてもこのような変化が普遍的に生じているのであろうか。高齢者では一般に食事の摂取量が低下し質も変化する。その背景には味覚の変化,咀嚼能の低下,消化液の分泌量の低下などが関与していると思われるが,腸管自身の吸収能の変化も大きくかかわってくると考えられる,また,胃酸の基礎分泌や刺激分泌の低下2)がカルシウムや鉄の吸収に影響を与えるように腸と他臓器の生理機能との相関も重要な因子となる。
 老化に伴う小腸での各栄養素の消化吸収能の変化とその特質は十分に明らかにされていない。実験方法,種差により,また同じ種においても報告者により結果が一致しない場合も多い。ここでは老化に伴う小腸の形態的変化,cell kinetics,刷子縁膜酵素の変化についてふれ,他臓器との相関について述べるとともに糖質・アミノ酸・脂質の三大栄養素の小腸吸収における加齢による変化の知見を解説する。とくに老化におけるカルシウムホメオスターシスの異常は骨代謝,動脈硬化症,高血圧症と近年臨床的にも注目の領域であり,小腸でのCa2+吸収低下の機序に関して細胞膜,分子レベルでの変化について述べる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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