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特集 意識と脳
精神医学における意識障害
著者: 町山幸輝1
所属機関: 1群馬大学医学部神経精神医学教室
ページ範囲:P.54 - P.58
文献購入ページに移動 I.精神医学における意識の概念
意識consciousness, Bewuβtseinという言葉はかなり多義的で,哲学,心理学,社会学,生物学,医学などの分野において様々の意味で用いられている。医学の分野においても精神医学とそれ以外の領域,たとえば神経学とでは意識の概念は異なり,また精神医学の中においても意見の相違がみられる。
医学における意識のもっとも基本的な意味は《個体が外界に対して注意を向け,対象を認知し,それに対して応答しうる状態にあること》である。この意味での意識の対極にあるものは,一つには生理的な睡眠,もう一つには病理的意識消失であって,両極の中間には様々の程度に意識が減弱した意識混濁がある。このような意識はヒトと動物で同様に捉えうる行動的,生物学的な概念であり,覚醒arousalあるいはヴィジランス(覚性,覚醒性) vigilanceという神経生理学的概念と置き換えることができる。精神医学以外の領域で用いられる意識はもっぱらこのような意味でのもので,歴史的にはこれに対してconsciousnessよりはsensoriumの語が当てられていた。
意識consciousness, Bewuβtseinという言葉はかなり多義的で,哲学,心理学,社会学,生物学,医学などの分野において様々の意味で用いられている。医学の分野においても精神医学とそれ以外の領域,たとえば神経学とでは意識の概念は異なり,また精神医学の中においても意見の相違がみられる。
医学における意識のもっとも基本的な意味は《個体が外界に対して注意を向け,対象を認知し,それに対して応答しうる状態にあること》である。この意味での意識の対極にあるものは,一つには生理的な睡眠,もう一つには病理的意識消失であって,両極の中間には様々の程度に意識が減弱した意識混濁がある。このような意識はヒトと動物で同様に捉えうる行動的,生物学的な概念であり,覚醒arousalあるいはヴィジランス(覚性,覚醒性) vigilanceという神経生理学的概念と置き換えることができる。精神医学以外の領域で用いられる意識はもっぱらこのような意味でのもので,歴史的にはこれに対してconsciousnessよりはsensoriumの語が当てられていた。
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