文献詳細
特集 意識と脳
文献概要
I.二元論と社会
「脳と心の二元論」の意義を論ぜよ,というのが私に与えられたテーマである。二元論の意義は社会的には明白であろう。トマス・ヘンリー・ハックスレーと,ウィルバフォース大司教の,進化に関する公開論争以降,西欧においては,教会は「心」,科学は「モノ」と,基本的に科学と教会とがその領域を分け,いわば「棲みわける」ことができたのである。
もちろん,わが国では事情が違う。最近,私が調べたところでは,日本の哲学者はすべて,人によっては暗黙のうちに心身一元論をとっていると思われる。一元論の一方の極は唯物論であり,他方の極は唯心論である。この国では後者が優越する。
「脳と心の二元論」の意義を論ぜよ,というのが私に与えられたテーマである。二元論の意義は社会的には明白であろう。トマス・ヘンリー・ハックスレーと,ウィルバフォース大司教の,進化に関する公開論争以降,西欧においては,教会は「心」,科学は「モノ」と,基本的に科学と教会とがその領域を分け,いわば「棲みわける」ことができたのである。
もちろん,わが国では事情が違う。最近,私が調べたところでは,日本の哲学者はすべて,人によっては暗黙のうちに心身一元論をとっていると思われる。一元論の一方の極は唯物論であり,他方の極は唯心論である。この国では後者が優越する。
掲載誌情報