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特集 大脳皮質発達の化学的側面
大脳皮質の発達とS-100蛋白質
著者: 加藤兼房1
所属機関: 1愛知県心身障害者コロニー・発達障害研究所生化学部
ページ範囲:P.109 - P.115
文献購入ページに移動 S-100蛋白質は脳特異蛋白質として1965年Moore1)によってウシ脳より精製された蛋白質である。神経系ではおもにグリア細胞に分布し,膜と結合して不溶性のものもあるが,大部分は細胞質に可溶性蛋白質として存在する。S-100はカルモジュリン,トロポニンCなどと同じEFハンド型カルシウム結合蛋白質である2,3)。それぞれ分子量約1万のα鎖(S-100α)とβ鎖(S-100β)の2種類のサブユニットよりなる2量体構造をとり,少なくともαα(S-100a0),αβ(S-100a),ββ(S-100b)の三種類が存在する。各サブユニットごとに2カ所のCa2+結合部位がある。しかし,Ca2+との結合定数は大きく(10-5~10-4M),カルモジュリンに比べて10倍以上大きい4)。すなわち,Ca2+との親和性は低い。S-100αとS-100βはその一次構造に60%近い相同性があるが,それぞれの遺伝子は異なる染色体に座位している。ヒトS-100βの遺伝子は第21染色体長腕のダウン症遺伝子と同じ位置(21q, 22)に座位することが明らかにされている5)。S-100αおよびS-100βの一次構造は動物種間での違いは僅かで,3~4のアミノ酸が置換されている程度である。それぞれのラットおよびヒトの遺伝子の構造も明らかにされている6-8)。
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