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文献詳細

雑誌文献

生体の科学43巻2号

1992年04月発行

文献概要

特集 大脳皮質発達の化学的側面

大脳の性分化と性ステロイド

著者: 新井康允1

所属機関: 1順天堂大学医学部第2解剖学教室

ページ範囲:P.127 - P.131

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 機能的にみて,脳にはいろいろなレベルで性差が認められる。性行動のパターンや攻撃行動などの雌雄差はもっともはっきりしたものの例といえる。また,下垂体のゴナドトロピンの分泌パターンも雌雄で異なるものが多く,ヒトを含む哺乳類の多くでは,雌でゴナドトロピンが周期的に分泌され,それが卵巣に働いて周期的に排卵が起こり,性周期を示すのに対して,雄ではゴナドトロピンの分泌には周期性は認められない。下垂体のゴナドトロピンの分泌の神経内分泌調節機構に性差があるわけである。ラットなどの実験結果から,このような脳の機能的性分化の決め手となるのは,周生期の精巣から分泌されるアンドロゲンであることが判明している。
 周生期の性ステロイドは脳の機能的性分化のみでなく,脳の形態レベルでも不可逆的な変化をもたらす。性ステロイド受容体含有ニューロン系のニューロンの数,軸索や樹状突起の伸展,シナプス形成などを性ステロイドが調節し,脳の発生過程における神経回路形成を制御していることが明らかになってきた。また,発生過程のみでなく,成体でも,ニューロンの可塑性を刺激する働きが注目される1)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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