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国際シンポジウム「筋収縮における筋フィラメントの滑り機構」
著者: 杉晴夫1
所属機関: 1帝京大学医学部生理学教室
ページ範囲:P.163 - P.165
文献購入ページに移動 1972年に行われた筋収縮に関するCold Spring Harbor Symposiumの雰囲気は,筋収縮は間もなく解明しつくされるであろうという楽観的な気分に満ちており,このためA. F. HuxleyはProceedingsの巻末でこの楽観論に警告を発している。以後現在に至る約20年間の研究の経過を見ると,上記のA. F. Huxleyの警告は的中したと言わざるを得ない。長らくこの分野のドグマとなってきた,筋収縮がミオシン頭部の“回転”により起こるという考え(Huxley-Simmons模型)は,X線回折や頭部に付着させたプローブの動きから支持されず,またアクトミオシン溶液におけるATP分解反応の知見と筋収縮に関する生理学的知見の間には依然として大きなギャップがある。
筆者は1971年にHuxley-Simmons模型が発表された際,その基礎となる実験に疑問を持った。彼らは筋線維の中央部のセグメント長をステップ状にクランプし,張力反応との関係を解析しているが,張力は筋線維の末端でしか記録できないので,クランプされたセグメントにおける“セグメント張力”ではない。したがって,このような実験の結果は筋収縮に関する分子レベルでの情報を与えるとは思われない。
筆者は1971年にHuxley-Simmons模型が発表された際,その基礎となる実験に疑問を持った。彼らは筋線維の中央部のセグメント長をステップ状にクランプし,張力反応との関係を解析しているが,張力は筋線維の末端でしか記録できないので,クランプされたセグメントにおける“セグメント張力”ではない。したがって,このような実験の結果は筋収縮に関する分子レベルでの情報を与えるとは思われない。
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