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文献詳細

雑誌文献

生体の科学43巻5号

1992年10月発行

文献概要

特集 〈研究室で役に立つ細胞株〉

細胞株の樹立について

著者: 大野忠夫1

所属機関: 1理化学研究所細胞銀行

ページ範囲:P.353 - P.354

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 1940年代から1950年代にかけて,まだ組織培養技術が未熟であった時期には,細胞を長期間生かしておくことが第一の目標であった。それがネズミの細胞やヒトの癌細胞を培養した場合,容易に細胞を増殖させられるようになってから,種々の細胞を増やすことが1950年代の組織培養の第一義となった。微生物の純粋培養株と同様,“細胞株(cell lineまたはcell strain)”という概念が一般化したのもこの頃と思われる。
 しかしネズミの細胞もヒトの癌細胞も,長期継代培養された細胞の染色体は異数性である。ヒトの正常2倍体細胞の培養は,線維芽細胞ならば比較的容易であるにもかかわらず,継代培養はヒト子宮頸部癌であるHeLa細胞のようには長続きせず,継代途中で必ず絶えてしまう。当時は培養技術に欠陥があるためと信じられており,正常2倍体のまま末永く継代培養してみせるのが激しい研究開発競争の重要なターゲットであった。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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