文献詳細
文献概要
特集 成長因子受容体/最近の進歩
c-erbB-2と細胞増殖
著者: 松田覚1 山本雅1
所属機関: 1東京大学医科学研究所制癌研究部
ページ範囲:P.567 - P.571
文献購入ページに移動 がん遺伝子の研究が進み,多くの遺伝子の同定およびその遺伝子産物の機能解析がなされてきた,この結果,がん遺伝子に対応するがん原遺伝子がコードする蛋白質は,正常細胞の分化や増殖の情報を司る重要な情報伝達経路上に存在していることが判明してきている。そして,これらの蛋白質に量的あるいは質的な変化が生じることにより正常細胞ががん化すると考えられるようになり,がん遺伝子産物の解析研究は重大な局面にさしかかってきた。
EGF受容体遺伝子の近縁遺伝子として同定されたc-erbB-2遺伝子は1),乳がんや胃がんなど様々ながん組織から遺伝子増幅や過剰発現が検出されており,加えてin vitroでの発がん実験結果からも,発がんに深く関与していることが示されている。しかし,この遺伝子の発現は正常成人組織ではあまり認められず,ほとんど胎児の上皮組織でのみ確認されることが報告されている2),このことから,ErbB-2蛋白質は正常上皮組織の分化発達段階で機能していると考えられるが,それがどうしてがん細胞で発現が生じるのか,またどのようなメカニズムでがん細胞たらしめるのかが現在の重要な研究課題となっている。
EGF受容体遺伝子の近縁遺伝子として同定されたc-erbB-2遺伝子は1),乳がんや胃がんなど様々ながん組織から遺伝子増幅や過剰発現が検出されており,加えてin vitroでの発がん実験結果からも,発がんに深く関与していることが示されている。しかし,この遺伝子の発現は正常成人組織ではあまり認められず,ほとんど胎児の上皮組織でのみ確認されることが報告されている2),このことから,ErbB-2蛋白質は正常上皮組織の分化発達段階で機能していると考えられるが,それがどうしてがん細胞で発現が生じるのか,またどのようなメカニズムでがん細胞たらしめるのかが現在の重要な研究課題となっている。
掲載誌情報