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特集 成長因子受容体/最近の進歩
脳神経細胞に対するEGFの作用
著者: 阿部和穂1 齋藤洋1
所属機関: 1東京大学薬学部薬品作用学教室
ページ範囲:P.575 - P.578
文献購入ページに移動 上皮成長因子(Epidermal Growth Factor;RGF)は,1962年Cohen1)によって新生児マウスの眼瞼開裂と切歯出現を早める因子として雄マウス顎下腺より見出された。分子量約6,000,等電点4.6,53個のアミノ酸からなる単鎖ポリペプチドである2-4)。現在では,種々の細胞に対して増殖刺激作用をもつ他,胃酸分泌抑制作用をもつこと5-7),精子形成に必要であること8)などが明らかにされている。ほとんどすべての組織から検出されることから他にも様々な生理作用をもつことが想像されるが,細胞増殖因子としての認識が強かったためか,とくに脳神経細胞をに対する作用はほとんど不明だった。しかし近年,ECFが培養脳神経細胞の生存維持に有効であることが見出出され,神経栄養因子としての働きが注目されてきた。また最近,われわれはEGFが脳神経シナプス伝達にも作用を及ぼすことを発見した。本稿では,EGFの新しい生理作用として注目される,脳神経細胞に対する多様な作用について,われわれの最新の研究成果を交じえて紹介する。
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