特集 成長因子受容体/最近の進歩
TGFα,EGF receptorとヒト卵巣癌におけるTGFα/EGF receptorオートクリン機構
著者:
倉智博久1
三宅侃1
谷澤修1
所属機関:
1大阪大学医学部産婦人科
ページ範囲:P.589 - P.595
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癌細胞自身が細胞増殖因子(growth factors)を産生するとともに,その受容体をも発現し,自分が産生した増殖因子が自身に作用する機構をオートクリン機構(autocrine mechanism)という。この機構はたとえば癌細胞の制御のきかない増殖をよく説明し得るモデルとして1980年SpornとTodaroによって提唱された1)。癌の増殖に重要なオートクリン機構として,肺の未分化小細胞癌のボンベシン2),乳癌のインスリン様増殖因子1(insulin-like growth factor,IGF-1)3)などが知られているが,もっとも多くの種類の癌でその発現が証明されているのが,上皮成長因子受容体〔epidermal growth factor(EGF)receptor〕を介したオートクリン機構である。EGF receptorに作用する増殖因子としては,一般的には後述のごとくEGFとtransforming growth factor(TGF)αの二つが考えられるが,乳癌4),腎癌5),膵癌6),肺癌7)など多くの癌で発現する増殖因子はいずれの癌においてもTGFαである。すなわち,これらの癌ではTGFαとEGF receptorによるオートクリン機構が発現していることが知られている。