icon fsr

文献詳細

雑誌文献

生体の科学43巻6号

1992年12月発行

文献概要

実験講座

蛍光色素による膜の染色法:ER染色を中心に

著者: 藤原敬己1

所属機関: 1国立循環器病センター循環器形態部 2

ページ範囲:P.632 - P.637

文献購入ページに移動
 細胞には,膜を持っている種々のオルガネラが存在するが,その中で大きな部分をしめているのが小胞体(endoplasmic reticulum,ER)である。ERという名称はPorterらにより,培養線維芽細胞の全載標本の電子顕微鏡像に見られる,細胞内に広がる“lace-like”ネットワークに対して与えられた1-3)。超薄切片作製の技術がすすみ,いろいろな生物試料の電顕観察が可能になるにつれ,ERが細胞の普遍的構造であることが示された4-7)。その機能としては,よく知られている分泌用タンパク質あるいは細胞膜に組み込まれるタンパク質などの合成に加え,脂質合成や細胞質内のCa2+濃度調節などがあげられる8,9)。ERは細胞にとってきわめて大切な,これら諸機能の場なのである。
 このように重要なオルガネラの細胞内分布を容易に知る方法があれば,細胞生物学上のいろいろな研究に役立つと考えられる。電顕によらないERの観察に向け,Terasakiらは数年来,親油性蛍光色素によるER染色法の開発・改良を行ってきた。ERを染色する蛍光色素として理想的なことは,(a)その色素がすべてのERを染色し,(b)ER以外の膜系を染めない,という二つの条件を備えていることである。しかし,今のところそのような色素はまだみつかっていない。現在用いられている色素でもっとも良いものは,DiOC6(3)(後述)と呼ばれるものであろう。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?