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文献詳細

雑誌文献

生体の科学44巻1号

1993年02月発行

話題

遺伝子治療研究の現状

著者: 高久史麿1

所属機関: 1国立病院医療センター

ページ範囲:P.72 - P.74

文献概要

I.遺伝子治療研究の現況
 遺伝性疾患に対する遺伝子治療は1990年4月にNIHで最初に始められた。対象となったのはadenosine deaminase(ADA)の先天性の欠損のために起こった重症複合免疫不全症の患者で,ADA欠損患者の末梢血中のTリンパ球にADAの遺伝子を導入して患者に戻す遺伝子治療である。
 ADA欠損症の患者が遺伝子治療の最初の対象として選ばれたのは,1)ADA欠損症は致死的な疾患である,2)骨髄移植によって治癒し得る,3)ADA遺伝子を導入されたリンパ球はADAを欠いたリンパ球よりも長期間生存し得る,などの理由による1,2)。この遣伝子治療は既に2例のADA欠損症の患児に対して行われ,Tリンパ球数の増加,血清ADA値の上昇,免疫能の回復が遺伝子治療の結果認められたことがいくつかの学会などで報告されている。特記すべきことは従来感染症に対する予防のために家屋外に出ることが出来なかった患児が学校に行くとが出来るようになったことで,その臨床的意義は極めて大きいと考えられる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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