文献詳細
特集 蛋白質の細胞内転送とその異常
文献概要
はじめに
細胞は種々の高分子物質をエンドサイトーシス機構によって細胞内に取り込んでいる。脂質の輸送をつかさどるリポ蛋白,鉄イオンのキャリアーであるトランスフェリンなどは最もよく知られた例である。しかし,細胞におけるエンドサイトーシス機構の役割は栄養分の補給だけではない。上皮細胞でみられる細胞を介した物質輸送(トランスサイトーシス),ホルモンや生長因子のリセプターを分解することによる細胞間情報伝達の制御(ダウンレギュレーション),血液中の老廃物を取り除くことによるホメオスターシスの維持,免疫担当細胞が行う抗原の提示,などもエンドサイトーシスの重要な役割である。またウイルスや細菌の感染も,これらの微生物がエンドサイトーシス機構を巧みに利用することで成立している場合が多い。
本稿で述べるジフテリア毒素も,エンドサイトーシスによって細胞内に取り込まれる蛋白質である。この毒素の特徴は,エンドサイトーシスによって取り込まれた毒素分子がエンドソームの膜を通過して細胞質に至り,そこで毒性を発揮することである。それゆえ,ジフテリア毒素が毒性を発現する機構の解析は,エンドサイトーシス機構のみならず蛋白質の膜通過機構の理解に役立つのである。
細胞は種々の高分子物質をエンドサイトーシス機構によって細胞内に取り込んでいる。脂質の輸送をつかさどるリポ蛋白,鉄イオンのキャリアーであるトランスフェリンなどは最もよく知られた例である。しかし,細胞におけるエンドサイトーシス機構の役割は栄養分の補給だけではない。上皮細胞でみられる細胞を介した物質輸送(トランスサイトーシス),ホルモンや生長因子のリセプターを分解することによる細胞間情報伝達の制御(ダウンレギュレーション),血液中の老廃物を取り除くことによるホメオスターシスの維持,免疫担当細胞が行う抗原の提示,などもエンドサイトーシスの重要な役割である。またウイルスや細菌の感染も,これらの微生物がエンドサイトーシス機構を巧みに利用することで成立している場合が多い。
本稿で述べるジフテリア毒素も,エンドサイトーシスによって細胞内に取り込まれる蛋白質である。この毒素の特徴は,エンドサイトーシスによって取り込まれた毒素分子がエンドソームの膜を通過して細胞質に至り,そこで毒性を発揮することである。それゆえ,ジフテリア毒素が毒性を発現する機構の解析は,エンドサイトーシス機構のみならず蛋白質の膜通過機構の理解に役立つのである。
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