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文献詳細

雑誌文献

生体の科学44巻4号

1993年08月発行

文献概要

特集 細胞接着

心臓の発生とN-カドヘリン発現

著者: 高松哲郎1 白石公1 藤田哲也1

所属機関: 1京都府立医科大学第2病理学教室

ページ範囲:P.306 - P.312

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 カドヘリンはカルシウムに依存して機能する細胞接着因子であり,組織の発生,分化にも深く関与する1)。とりわけ強い収縮を繰り返す心筋細胞では,隣合う心筋細胞の筋原線維を強固に接着することが不可欠である。成熟した心筋細胞のintercalated diskにはN-カドヘリンが豊富に存在し2),筋原線維に生じた収縮力を細胞膜をこえて隣合う細胞に伝え,心臓全体の収縮力を生み出すのに役立っている。ここでは,N-カドヘリンが心臓の初期形態形成,とくに筋原線維の形成やこれと並行しておきる心ループ形成にどのように関与しているのか論じてみたい。
 ところで,ヒトを含む脊椎動物の発生において形態学的な左右差は,もっとも早く心臓の原器(心臓管)に現れる。まっすぐであった心臓管(図1A)が,何らかの機序によって右に膨らみ心ループを形成する(図1B & C)。これによって右房・左房の位置が決まり,たとえばヒトでは右房側の肺は3葉に,左房側の肺は2葉に,肝臓が右,脾臓が左といった具合である。つまり,解剖学的な右房がどちらにくるかによってからだの右側は決定され,もし左にくればミラーイメージの個体となる。このことは,これまで幾分哲学的なニュアンスで語られてきたからだの左右の問題を,分子や細胞レベルで検討する足がかりを与えてくれる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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