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文献詳細

雑誌文献

生体の科学44巻4号

1993年08月発行

文献概要

連載講座 新しい観点からみた器官

味覚器-味覚における甘味受容機構研究の新しい展開

著者: 二ノ宮裕三1 井元敏明2 日地康武2

所属機関: 1朝日大学歯学部口腔生理学教室 2鳥取大学医学部第一生理学教室

ページ範囲:P.365 - P.373

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 日本で出版されている医学生向けに書かれた生理学の教科書のどれをみても,感覚を扱った章の中で味覚についての記述は視覚や聴覚に比べてきわめて少ない。これは医学部における生理学がヒトを念頭においたものである以上,ヒトにおける味覚というものの重要度が,この程度であることを意味しているのであろう。たしかに,ヒトが感覚器をとおして受け取る外界からの情報量が視覚や聴覚によるものが圧倒的に多いことは,感覚器からの求心性情報を伝える神経線維の本数を単純に比較するだけでも推測できる。たとえば,視神経は数百万本の線維から成っているのに対して,舌前半部の味覚情報を伝える線維の数は,たかだか数千本にすぎない。
 ところが,広く生物界をみてみれば明らかなように,味覚や嗅覚などのいわゆる化学感覚は,個体の維持ばかりでなく種の保存にとっても大きな役割を果たしている。味覚についていえば,摂取すべき食物の選択,不必要または害となる物質からの忌避行動を引きおこす直接の情報をもたらす一方,その情報は自律神経系を介して,消化液やホルモンの分泌を調節している。このような認識からすれば,味覚の研究はもっと進んでもよさそうに思われるが,他の感覚に比べると,その華々しさにおいて,また分子レベルでの理解において随分と遅れているようにみえる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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