icon fsr

文献詳細

雑誌文献

生体の科学44巻5号

1993年10月発行

特集 現代医学・生物学の仮説・学説

3.発生・分化・老化

胚葉の形成と分化

著者: 平光厲司1

所属機関: 1埼玉医科大学解剖学教室

ページ範囲:P.490 - P.493

文献概要

概説
 発生学といえば胚葉を思いおこす人が多いらしい。胚葉にはそれほど強い印象を残す響きがあるのだろうか。胚葉という語は,もちろんドイツ語Keimblattの訳である。ここに胚葉が認識された19世紀ドイツ形態学の名残がある。それは進化論の影響を受けて系統発生と結びつけられ,やがて20世紀の実験発生学に上つて各胚葉の運命,相互作用の解明という新しい展開をみせたのであつた。胚葉概念はいわば100年以上にわたって時代の流れにもまれ続けてきたのである1)。今日では胚葉の特異性は否定されているが,その形態学的意義が失われたわけではない。しかし誤解もある。ここであらためて、胚葉について考えてみたい。
 胚葉説:「細胞説」に匹敵するくらい重要である,とO. Hertwig(1910)が書いている「胚葉説」は,生物学,発生学の歴史には必ずといってよいほど言及されているので,詳細は省くとしても,主要点だけはメモしておきたい。すなわち,①胚葉説は後生説と不可分の関係がある。②両説の基盤はC. F. Wolff(1764)にあるとされる。ただしその影響はMeckel(1812)によつて翻訳されたWolffのラテンテキストで,胚葉概念を確立したのは,このテキストに触発されたC. Pander(1817)とその同門K. E. von Baer(1828-1837)である。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら