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特集 現代医学・生物学の仮説・学説 3.発生・分化・老化
神経堤起源細胞
著者: 養老孟司1
所属機関: 1東京大学医学部解剖学第二講座
ページ範囲:P.496 - P.497
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神経堤neural crestは,外胚葉のうち,将来の中枢神経系を形成する神経外胚葉neural ectodermと,表皮を形成する皮膚(表皮)外胚葉epidermal ectodermの中間に位置し,初期胚では,胚の表面に堤防状の隆起(神経隆起)を形成するので,この名がある。
神経堤起源の細胞は,発生上いくつかの著明な特徴を示す。その第一は,移動能である。この細胞は,神経管の形成にともなって,上皮を離れ,間葉中を移動し,最終部位に落ち着いて分化する。第二に,この細胞は多分化能を示す。これが脊髄神経節などの末梢神経節,副腎髄質,シュワン細胞,メラノサイトなどに分化することは,十九世紀の後半から,つぎつぎに知られるようになった。最近では,胸腺のような内分泌器官についても,その関与が知られている。第三の特徴として,神経堤起源細胞は,それが起源する部位によって異なる分化能を示す。とくに頭部神経堤は,顔面および鰓弓領域の間葉細胞をつくり,鰓弓骨格や軟骨頭蓋の一部(trabecula craniiの前部)を形成する。こうした軟骨形成能は,頭部以外の神経堤細胞には認められていない。さらに皮骨の一部や歯の形成にも関わる。
神経堤neural crestは,外胚葉のうち,将来の中枢神経系を形成する神経外胚葉neural ectodermと,表皮を形成する皮膚(表皮)外胚葉epidermal ectodermの中間に位置し,初期胚では,胚の表面に堤防状の隆起(神経隆起)を形成するので,この名がある。
神経堤起源の細胞は,発生上いくつかの著明な特徴を示す。その第一は,移動能である。この細胞は,神経管の形成にともなって,上皮を離れ,間葉中を移動し,最終部位に落ち着いて分化する。第二に,この細胞は多分化能を示す。これが脊髄神経節などの末梢神経節,副腎髄質,シュワン細胞,メラノサイトなどに分化することは,十九世紀の後半から,つぎつぎに知られるようになった。最近では,胸腺のような内分泌器官についても,その関与が知られている。第三の特徴として,神経堤起源細胞は,それが起源する部位によって異なる分化能を示す。とくに頭部神経堤は,顔面および鰓弓領域の間葉細胞をつくり,鰓弓骨格や軟骨頭蓋の一部(trabecula craniiの前部)を形成する。こうした軟骨形成能は,頭部以外の神経堤細胞には認められていない。さらに皮骨の一部や歯の形成にも関わる。
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