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特集 現代医学・生物学の仮説・学説 3.発生・分化・老化
アポトーシス
著者: 帯刀益夫1
所属機関: 1東北大学加齢医学研究所分子発生研究分野
ページ範囲:P.500 - P.503
文献購入ページに移動アポトーシス(apoptosis,pは発音せずアポトージスともいう)は,生体内でおきる細胞死の一つである。細胞の死は,形態的に,necrosisとapoptosisに分けられる。一般に,necrosisは細胞膜の破壊が先行し,核の崩壊が後からおきるのに対し,apoptosisでは.核の変化が先行するのが特徴である。necrosisは生体の異常状態でおきるのに対し,apoptosisは,発生過程でおきる正常な細胞の死(予定細胞死,programmed cell death)で認められる。たとえば指の形成時には,手の水かきにあたる部分で細胞死がおきるし,神経細胞は発生過程でまず過剰に生産され,その後40-70%の細胞が脱落していくと考えられ,この自然におこる神経細胞死も予定細胞死である。また,線虫の発生過程でも細胞分裂後の特定の細胞が死ぬ運命にあり,その死を免れることのできる遺伝的変異株も得られている。ちなみに,この変異株では細胞は過剰のまま生育してしまい,とくに異常は認められない。最近,癌遺伝子のはたらきや細胞周期のメカニズムなど細胞増殖のメカニズムが明らかになるにつれて,細胞の死の研究が可能になり,このような細胞死のメカニズムにも注目が集まってきた。そして,よい日本語訳がないままに,apoptosisという言葉がそのまま使われている。
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