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文献詳細

雑誌文献

生体の科学44巻5号

1993年10月発行

文献概要

特集 現代医学・生物学の仮説・学説 4.シグナル伝達系

蛋白質燐酸化,脱燐酸化反応

著者: 宮本英七1 山本秀幸1

所属機関: 1熊本大学医学部薬理学第一講座

ページ範囲:P.517 - P.521

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概説
 蛋白質の中に燐酸が含まれていることは,すでに今世紀初めに知られていた。1930年代には,蛋白質のセリン残基が燐酸化を受けることが見出された。1950年代には、蛋白質を燐酸化するプロテインキナーゼ(PK)の存在に気づかれ,酵素学的研究に関する報告がなされている。1950年代後半から1960年代前半にかけて,F. Lipmann,R. Rodnightなどのグループによる報告がある。研究上大きな進展をみたのは,ホスホリラーゼbキナーゼの研究を長年にわたって行なっていたE. G. Krebsが,1968年にcAMP依存性PK(Aキナーゼ)を発見したことである。E. W. SutherlandによってcAMPが発見され,全身の多くのホルモン作用がcAMPを介して発揮されると考えられていた。Aキナービの発見は,cAMPの細胞内の作用機作を明らかにするものと考えられた。Aキナーゼが動物界に広く存在し,全身のすべての臓器に認められたことは,このことを裏付けた。Aキナーゼ発見以来,セカンドメッセンジャー依存性PKや非依存性PKが多数見出された1)
 蛋白質にATPのγ位の燐酸を転移させるのを触媒する酵素がPKであり,燐酸化蛋白質が生ずる。生じた燐酸化蛋白質は機能的活性が変化し,作用をもつに至る。生体内では物質の活性を消去する機構が必要であり,燐酸化蛋白質を脱燐酸化するプロテインホスファターゼ(PrP)が存在する。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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