文献詳細
特集 滑面小胞体をめぐる諸問題
文献概要
膜蛋白質や分泌蛋白質は粗面小胞体の膜上で合成され,小胞体腔へ移行する。このような新生蛋白質は,そこで立体構造を形成し,あるものは多量体を形成する。またジスルフィド結合(S-S結合)の形成やアスパラギン(Asn)結合型糖鎖付加などの蛋白質の修飾も小胞体腔で行われる。このようにして正しい構造を獲得した蛋白質は小胞体からゴルジ体へ移行し,やがて最終的な目的地へ到達し,その機能を発揮する。ところが小胞体腔で正しい構造形成が行われない場合,異常な蛋白質は小胞体からゴルジ体への移行ができず,ときにはそこですみやかに分解されることが知られている。
この分解様式は,1988年Klausnerの一派によってはじめて明確に示された1)。彼らはT細胞抗原受容体(T cell antigen receptor:TCR)のαサブユニットのみをマウスの繊維芽細胞で発現させ,非会合状態にあるこの蛋白質の運命を解析した。TCRαは合成後20分間のラグタイムの後,約50分の半減期で分解された。この分解は,リソソーム系による分解とは異なり,TCRαがゴルジ体中間部(medial Golgi)に到達する以前に起こることが示された。分解される前のTCRαは小胞体にしか認められないことから,この様式の分解はER degradationまたはpre-Golgi degradation(pre-Golgi分解)とよばれている。
この分解様式は,1988年Klausnerの一派によってはじめて明確に示された1)。彼らはT細胞抗原受容体(T cell antigen receptor:TCR)のαサブユニットのみをマウスの繊維芽細胞で発現させ,非会合状態にあるこの蛋白質の運命を解析した。TCRαは合成後20分間のラグタイムの後,約50分の半減期で分解された。この分解は,リソソーム系による分解とは異なり,TCRαがゴルジ体中間部(medial Golgi)に到達する以前に起こることが示された。分解される前のTCRαは小胞体にしか認められないことから,この様式の分解はER degradationまたはpre-Golgi degradation(pre-Golgi分解)とよばれている。
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