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文献詳細

雑誌文献

生体の科学44巻6号

1993年12月発行

特集 滑面小胞体をめぐる諸問題

変異タンパク(リゾチーム)のERによる分解

著者: 大村文彦1 菊池正和2

所属機関: 1サントリー基礎研究所 2蛋白工学研究所

ページ範囲:P.674 - P.677

文献概要

 膜蛋白質や分泌蛋白質は粗面小胞体の膜上で合成され,小胞体腔へ移行する。このような新生蛋白質は,そこで立体構造を形成し,あるものは多量体を形成する。またジスルフィド結合(S-S結合)の形成やアスパラギン(Asn)結合型糖鎖付加などの蛋白質の修飾も小胞体腔で行われる。このようにして正しい構造を獲得した蛋白質は小胞体からゴルジ体へ移行し,やがて最終的な目的地へ到達し,その機能を発揮する。ところが小胞体腔で正しい構造形成が行われない場合,異常な蛋白質は小胞体からゴルジ体への移行ができず,ときにはそこですみやかに分解されることが知られている。
 この分解様式は,1988年Klausnerの一派によってはじめて明確に示された1)。彼らはT細胞抗原受容体(T cell antigen receptor:TCR)のαサブユニットのみをマウスの繊維芽細胞で発現させ,非会合状態にあるこの蛋白質の運命を解析した。TCRαは合成後20分間のラグタイムの後,約50分の半減期で分解された。この分解は,リソソーム系による分解とは異なり,TCRαがゴルジ体中間部(medial Golgi)に到達する以前に起こることが示された。分解される前のTCRαは小胞体にしか認められないことから,この様式の分解はER degradationまたはpre-Golgi degradation(pre-Golgi分解)とよばれている。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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