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文献詳細

雑誌文献

生体の科学44巻6号

1993年12月発行

文献概要

解説

記憶,学習とタンパク質リン酸化反応

著者: 鈴木龍雄1 田中亮1

所属機関: 1名古屋市立大学医学部生化学第一講座

ページ範囲:P.710 - P.719

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 記憶,学習といった脳の機能は,複数の神経細胞のシナプス間コミュニケーションによって発現してくる。ある特定の神経回路にしぼっていえば,記憶,学習はその回路を構成する神経細胞間のシナプス伝達効率が可塑的に変化するという神経細胞の性質に基盤をおいている。したがって,記憶,学習のメカニズムを明らかにするためには,シナプス間コミュニケーションの可変性のメカニズムを分子レベルで明らかにする必要がある。一般に,細胞内情報伝達系においてはタンパク質リン酸化反応による多重制御系がはたらいており,細胞内の情報の流れはタンパク質リン酸化反応によって大きく左右される。このことはシナプスを構成する少なくともふたつの神経細胞のそれぞれにも当てはまるであろう。最も高度に分化した構造のひとつであるシナプスにおいては,情報伝達の仕組は今まで他の細胞で明らかになった以上に複雑であると予想される。
 本解説では,学習,記憶のモデルとされる長期増強(long-term potentiation,LTP)の発現に,どういったタンパク質リン酸化反応がどのように関わるのかを詳細に検討する。そのほか,LTPとタンパク質生合成の連関についても述べる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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