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文献詳細

雑誌文献

生体の科学45巻1号

1994年02月発行

文献概要

特集 グルコーストランスポーター

グルコーストランスポーターの多機能性

著者: 西田幹夫1

所属機関: 1名城大学薬学部臨床薬学研究室

ページ範囲:P.29 - P.31

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 グルコースの細胞膜通過を援ける機構には,少なくとも7種類のグルコーストランスポーター(glucose transporter:GT,糖輸送体)が知られており,それぞれ,主としてどの臓器に分布するかが明らかになってきた1)。GTは従来,基質に対する立体的な特異性が高く2),通過可能な化合物の構造に対する要求性が高いと考えられてきた3)。しかし,GTの遺伝子解析が進むにつれて,腸管のGT(Glut5/小腸タイプ)のように,複数の糖単体に親和性を示すGTの存在が明らかにされた1)
 さて,私達は,実験催糖尿薬ストレプトゾトシン(STZ)やアロキサン(Allo)による糖尿発症機構の解明を試みる過程で,膵β細胞がグルコースを認識するセンサーはGTではないか,と想像するに至った4)。このセンサー機能を兼ね備えたGTは,グルコースのみならず,2-デスオキシ-D-グルコース(2-DG)5)や3-O-メチル-D-グルコース(3-OMG)6)も通過させうる。したがって,GTは,(1)センサーによって認識可能な糖の構造さえ含有すれば,特定の糖に限らず通過させうる性質があるのではないか,(2)構造上,糖以外の化学物質でも,ある種の構造類以性を有する物質は,GTを介して膜を通過できるのではないかと思われる7)。すなわち,GTは,化学構造物としては必ずしもグルコースのみの通過機構ではない,と推定される。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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