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文献詳細

雑誌文献

生体の科学45巻1号

1994年02月発行

文献概要

解説

精子―卵相互作用のシグナル伝達メカニズム

著者: 宮崎俊一1 白川英樹1

所属機関: 1東京女子医科大学第二生理学教室

ページ範囲:P.79 - P.90

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 受精現象は,精子と卵の接着,細胞膜どうしの融合,細胞質の交流を経て,精子核および細胞質が卵内に取り込まれ,雌雄前核が形成され,両者が融合するまでの過程をいう1)。しかし受精前に,各配偶子の発育,成熟が必要であり,精子と卵が出会う機会をつくるための機構や,種特異的な結合を可能にする機構が必須である1,2)。さらに受精は当然その後の細胞分裂や細胞分化の開始に関連する。したがって受精は広範囲の現象を含み,各段階でいろいろな研究課題があり,一つ一つテーマが非常に興味深い。さらにまたそれらの研究は,他の細胞/現象系に対して有用な示唆を与えうる。普遍的な観点から受精という現象を捉えれば,それは細胞―細胞間の相互作用に基づく細胞活性化であるといえよう。すなわち卵から精子への作用,精子と卵の結合,精子から卵への作用を含む。ここでは,精子―卵相互作用のシグナル伝達に関する最近の知見を解説する。
 受精の本質的なテーマである精子による卵賦活の信号伝達機序は,ホルモンや増殖因子による細胞活性化に比べて研究が遙かに遅れている。代謝的に不活発な,いわば眠った状態にある未受精卵は,精子の結合によって突然目を覚まし活性化される。受精初期に卵で起こる現象は細胞内カルシウムイオン(以下Caと記す)濃度の劇的な上昇であり,卵賦活の引き金になると考えられている3)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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