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文献詳細

雑誌文献

生体の科学45巻2号

1994年04月発行

文献概要

特集 脳と分子生物学

神経細胞の最初期遺伝子

著者: 山形要人1

所属機関: 1大阪大学医学部第1薬理学教室

ページ範囲:P.139 - P.144

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 現在,記憶のメカニズムを説明する仮説として,シナプスの可塑性,すなわちシナプスの伝達効率の変化やシナプス結合の形態変化を考える説が有力である。海馬や大脳皮質でおこる長期増強(LTP)1)や,小脳などでおこる長期抑圧(LTD)2)は,シナプス伝達効率の変化によると考えられている。もう1つのシナプスの発芽によるシナプス数の増加3)や競合によるシナプスの退行,脱落4)も,神経の可塑性を説明するための重要な現象である。
 中枢神経系は,神経間の非常に正確なシナプス結合によって機能しているが,その過程をみてみると,成長円錐がまず正しい経路を探し,標的神経に到達した後,シナプスを形成する。ここまでは,遺伝的にプログラムされており,神経活動とは無関係である。しかし,その後,NMDAリセプターなどを介する神経活動によってシナプスの再構築がおこり,より機能的なシナプス回路が形成されると考えられる5)。このシナプス活動依存性の神経の可塑性は生後も続き,長期記憶の保持に必要と考えられる。このように神経は,シナプス活動によって,解剖学的,機能的特性を変える。最近の研究で,細胞の外からの刺激(神経伝達物質や成長因子)が,遺伝子発現のカスケードを活性化し,長時間の細胞応答,すなわち新しいシナプス結合を生じると考えられる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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