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文献詳細

雑誌文献

生体の科学45巻3号

1994年06月発行

文献概要

特集 染色体

性分化とY染色体

著者: 中込弥男1 中堀豊1

所属機関: 1東京大学大学院医学系研究科人類遺伝学講座

ページ範囲:P.259 - P.262

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I.性腺分化におけるY染色体
 ヒトにおいては胎生初期の未分化な性腺原基の睾丸側への分化において,Y染色体が決定的な役割を果たす。理論的には睾丸決定因子(TDF)と命名すべき遺伝子がY染色体上に存在することになる。これはX染色体の数と常染色体とのバランス(X/A比)に基づいて性腺の分化の方向が決まるショウジョウバエなどとは異なる性決定の機構である。TDFの本態はSRYと呼ぶ遺伝子であり,1990年にクローン化済みである1)。本遺伝子はイントロンを持たず,転写産物は1.1kbの長さで,310bpほど上流にはプロモーターがあること2),塩基配列は進化的にほどよく保存され,HMG(high mobility-group protein)と呼ばれるDNA結合性の非ヒストン蛋白と相同性を示すことがわかっている1)
 ショウジョウバエではX/A比が低いと,第2段階以下の遺伝子の転写産物(RNA)のsplicingが変って,その結果,未分化な性腺の睾丸側への分化が始まるという3)。2段目,3段目などの遺伝子が睾丸の分化に必要であり,いわば多段式ロケットにより人工衛星を目標の軌道に乗せることに例えられよう。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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