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特集 染色体
X染色体の不活性化
著者: 高木信夫1
所属機関: 1北海道大学大学院地球環境科学研究科
ページ範囲:P.263 - P.265
文献購入ページに移動 X染色体の不活性化(X chromosome inactivation:XCI)は哺乳類に特有の遺伝機構で,雄(XY)の二倍になっている雌(XX)のX連鎖遺伝子量を補正するために,雌細胞の一方のX染色体にある遺伝子の活性を一括して抑制あるいは再び活性化するものである1)。これが染色体を単位とした現象であることは,雌の体細胞には1本の晩期複製をするヘテロクロマチン化したX染色体があり,これが性染色質を形成することから明らかである。欠失がありながら不活性になりうるヒトX染色体には必ず共通な部分があることは,XCIのスイッチが1個であることを示唆する。このスイッチつまり不活性化センター(X chromosome inactivation center:Xic)はXCIの開始(initiation)だけでなく,染色体全体への広がり(spreading),安定な維持(maintenance)に必須と考えられている。Xicに要求されるこれら3点のいずれについても理解が進んでいるとはいいがたいが,維持あるいは開始については近年見いだされたXist(X inactivation specific transcript)2)の関わりが脚光を浴びている。最も研究が立遅れているのはspreadingであるが,徐々に関連ある,興味深い現象が報告されはじめているので,この点について述べてみたい。
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