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特集 染色体
哺乳類染色体のセントロメア
著者: 岡崎恒子1
所属機関: 1名古屋大学理学部分子生物学教室
ページ範囲:P.266 - P.270
文献購入ページに移動 真核細胞の有する膨大な量の遺伝情報は,有糸分裂の過程を経て次世代細胞に正確に受け渡される。この動的過程で複製により倍化した染色体は,高度に凝縮され光学顕微鏡下で観察可能な形状となる。姉妹染色分体が対合した一次狭窄部位は,分裂装置微小管が付着し染色体の移動に重要な役割を演ずることが古くから観察されており,この部位をセントロメアあるいはキネトコア(両者とも動原体)と呼んできた。哺乳類染色体では電子顕微鏡による解析でセントロメアクロマチンの表層に外層・中間層・内層からなる三層構造が観察されるので,この構造をキネトコアと呼んでいる1)。微小管は外層に付着し,内層はクロマチンに密着していて,両者の中間の層はほとんど構造物がみえない(図1)2,3)。キネトコアの外層に接して線維状コロナが存在し,ここにモーター蛋白ダイニンが免疫電顕で検出されることや,in vitroでキネトコアに沿って微小管がすべり運動を行うことなどから,染色体の移動力はこの部位で発生していると考えられている(図1)4,5)。姉妹染色分体の対合領域には中期から後期への移行のタイミングを制御する分離の仕組みも存在するはずである。哺乳類セントロメアは繰り返しDNA配列を主成分としたヘテロクロマチンからなる巨大な領域であり,分子レベルでの解析に注目すべき進展がみられるようになったのは最近のことである。
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