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特集 染色体
ヒト染色体のテロメア配列
著者: 神田尚俊1 相川英三1
所属機関: 1東京女子医科大学解剖学・発生生物学教室
ページ範囲:P.271 - P.273
文献購入ページに移動 “テロメア”とは染色体の末端を意味し,DNAと蛋白で構成されているが,その領域は厳密に定義されてはいない。テロメアは,1930年代から1940年代にかけて2人のノーベル賞受賞者によって注目され,H. Müllerはショウジョウバエの放射線誘発突然変異の研究から,またB. McClintockはトウモロコシ染色体の研究から,「テロメアは染色体の構造的安定性に重要な役割を果している」と結論した。その後,WatsonとCrickによってDNAの2重鎖構造が報告されると,テロメア領域のDNA構造と複製様式が問題となったが未解決のまま残った。テロメアのあらたな研究は,E. Bruckburnが,原生動物テトラヒメナから,テロメア領域に局在する特殊な反復配列(TTGGGG)nの分離に成功し,これが手がかりとなってヒトを含め,各種の生物でテロメア配列の研究が進んだ1-3)。この反復配列はG(グアニン)が多く,基本構造が種をこえて同じか,類似していることから,テロメアの構造維持に重要な役割を果していると考えられている。テロメア配列は他の反復配列と異なり,細胞の老化や腫瘍化によって著しい変動をしており,その生物学的意味を探る研究が進行しつつある。
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