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文献詳細

雑誌文献

生体の科学45巻4号

1994年08月発行

文献概要

特集 造血の機構

血液幹細胞の増殖と分化

著者: 北村幸彦1

所属機関: 1大阪大学医学部病理学講座

ページ範囲:P.319 - P.322

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I.多分化能造血幹細胞
 体重70kgのヒトでは1日に赤血球2000億個,好中球700億個が生産され,それ以外の血液細胞を合わせると1兆個に近い数の細胞が造られていることになる1)。もちろんこれと同数の細胞が死滅することにより平衡が保たれているのである。すべての血液細胞と,マスト細胞・マクロファージのような結合組織細胞,さらに粘膜型マスト細胞やランゲルハンス細胞のように,おのおのマスト細胞とマクロファージに近縁の細胞ではあるが,上皮組織中に存在する細胞も含めて,きわめて多種類の細胞が多分化能血液幹細胞から分化する。しかもこのような多分化能血液幹細胞の子孫は,数の点でも種類の点でも,ヒトの一生という,きわめて長期にわたって生産され続ける。もちろん生産される子孫の数の点で問題が生ずれば再生不良性貧血になるし,分化が正常に行われなくなれば白血病になるわけであるが,大部分のヒトでは,多分化能幹細胞を頂点とする造血システムは,一生の間正常に機能を続ける。
 多分化能血液幹細胞に自己保存能力と分化能力の両方がなければ,造血システムが長期にわたり持続できるはずがない。自己保存と多分化能は,ともに生物学の興味ある対象である。一方,再生不良性貧血と白血病の治療法として,最近普及のめざましい骨髄移植は多分化能血液幹細胞そのものの移植である。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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