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免疫系の進化
著者: 友永進1 藤井玲子1
所属機関: 1山口大学医療技術短期大学部
ページ範囲:P.381 - P.387
文献購入ページに移動 ヒトやマウスなどの哺乳動物の免疫系に関する研究は,細胞生物学や分子生物学の著しい進歩の影響を受けて,近年目覚ましく発展した。新しい発見は同時に新しい謎を生み,学問は際限なく深まっていく。免疫系は消化・呼吸系や泌尿・生殖系などと並んだ一つの系として位置づけられるとともに,一方では,他の系,例えば内分泌・神経系との深い関連性も指摘され,それが重要視されるようになってきた。いずれにしろ,哺乳動物の免疫系の研究の進歩は,その系の巧妙さ,複雑さを浮き彫りにしつつある。また,複雑な系の研究が進めば進むほど,この系は地球における生物の進化の過程を通してどのように進化してきたのであろうかという疑問も深まってくる。すべての動物はそれが種として存続していくためには,病原微生物,ウイルス,寄生虫などの非自己を認識し,排除する必要性に迫られることになり,その意味では,現在地球に棲息しているすべての動物が免疫系を備えているといえる。しかし,無脊椎動物には獲得性免疫の担当細胞であるリンパ球をつくるリンパ組織はなく,免疫グロブリンも存在しない1-3)。そのため特異性のある免疫学的認識機構の存在は疑わしい。一般的には無脊椎動物の免疫機構は非特異的な自然免疫(innate immunity)であると理解されている。
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