icon fsr

文献詳細

雑誌文献

生体の科学45巻6号

1994年12月発行

文献概要

特集 ミトコンドリア

分裂装置からみたミトコンドリアの起源と進化

著者: 黒岩常祥1

所属機関: 1東京大学大学院理学系研究科

ページ範囲:P.643 - P.651

文献購入ページに移動
 遺伝物質DNA(ゲノム)は,動物細胞においては細胞核とミトコンドリア(mt)に存在し,植物細胞ではさらに色素体にも存在する。しかし最近までmtや色素体のような細胞質にあるオルガネラのDNAを簡単にin situで示すことができなかったため,mtは細胞内のATP産生の場として,色素体は葉緑体の機能である光合成の場としてのみ取りあげられてきた。また,それらのDNAを扱う場合には分子生物学的にのみ扱い,そのオルガネラ内での存在様式やオルガネラの分裂・増殖様式などに関してはむしろ関心が低い。細胞内のDNAを観察する従来の技術,例えば代表的なフォイルゲン染色法はDNA分子とタンパク質の結合が強固な細胞核内のDNAを可視化するには適していたかもしれない。しかしすでにわれわれが何度も指摘してきたように,オルガネラDNAとその結合タンパク質からなるオルガネラ核の観察には不適切であり,処理過程で,変性,溶出,分解を起こし,実際にはかなりの量のオルガネラDNAが細胞内に存在していても視覚化できなかった。これに対し新たに開発したテクノビットDAPI法ではたくさんのオルガネラDNAを認めることができる。この方法で卵細胞のオルガネラ核DNA量が,通常の細胞の数千倍にも達することがわかり,オルガネラの生活環におけるダイナミックな変化が浮き彫りにされてきた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?