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特集 ミトコンドリア
パーキンソン病,ミトコンドリア脳筋症,心筋症に共通のDNA変化
著者: 小澤高将1
所属機関: 1名古屋大学医学部生化学第二講座
ページ範囲:P.698 - P.706
文献購入ページに移動パーキンソン病,ミトコンドリア脳筋症,特発性心筋症は,いずれも,脳神経,筋肉という出生後は細胞分裂しない分裂終了細胞のミトコンドリア(以下mtと略す)の遺伝子異常に起因するmt病である。
1962年,Luftらが病因不明のmt機能異常を示す患者を報告し,mt病という名称を提唱した1)。その後,mt脳筋症,mtミオパチーは,1970年代から臨床的に高乳酸血症,mt形態異常が注目され,mt機能異常を疑われる症候群に命名された。1981年ヒトmtに固有のmtDNAの存在が確認され,その中の遺伝子配置と塩基配列が報告された2)。われわれは1986~7年,mt形態異常のあるmt脳筋症患者の筋肉組織において,エネルギー産生系酵素複合体の結晶化から得られた良質な抗体を使ってWestern blotを行った結果,系のサブユニットが欠損していることを報告した3,4)。こうした所見から,当然その遺伝子であるmtDNA変異が疑われ,Southern blot分析によってmt脳筋症患者のmtDNA欠失が世界各地で報告された5,6)。しかしSouthern blotは人体標本の分析手段としては感度が低く,mt脳筋症患者でもmtDNA欠失が証明できない症例もありmtDNA変異をこれら疾患の主病因とするには疑問が残った7)。
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