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実験講座
ミトコンドリア膜の酸素拡散係数の測定法
著者: 土居勝彦1 内田勝雄1
所属機関: 1山形大学医学部生理学部第一講座
ページ範囲:P.721 - P.727
文献購入ページに移動 酸素は脂溶性分子であるから,生体膜の脂質二重層を容易に透過するはずである。しかし,無制限でもあるまい。生体膜はどの程度の拡散係数(Do2)を有しているものであろうか。Do2がわかれば,酸素の膜透過に要する平均時間が推定でき,膜が酸素輸送に関して障壁となるか否かが判断できる。Do2は基本的にはO2フラックスを測定してFickの式に代入すれば得られるが,この方法を生体膜に適用するのは難しい。そこで,光学的方法が威力を発揮する。O2感受性を有し,かつ脂溶性の蛍光プローブを用いる方法で,ピレンおよびその誘導体のO2による蛍光消光(クエンチング)が利用される。ピレンの誘導体,ピレン酪酸(pyrenebutyric acid,PBA)の蛍光消光を最初に生体系に応用したのはVaughan & Weber1)で,O2濃度の微視的プローブとしての有用性を示した。PBAはその後,生体組織の光学的O2センサーとして用いられた2,3)。この方法による生体膜のDo2測定は,これまでに赤血球膜を用いたFischkoff & Vanderkooi4)の報告がある。筆者らは,単一分離したラットの心室筋細胞およびその細胞から単離したミトコンドリア(Mt)を用いて,PBAの蛍光消光により心筋細胞形質膜とMt膜のDo2を測定した5)。本稿では,蛍光消光法によるDo2測定の原理と筆者らの実験結果を紹介する。
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