文献詳細
文献概要
特集 神経科学の謎
受容体の分子的多様性はどのような機能的意義をもつのか
著者: 小澤瀞司1
所属機関: 1群馬大学医学部第二生理学教室
ページ範囲:P.8 - P.12
文献購入ページに移動 ニューロン間のシナプス伝達は,シナプス前細胞から放出される化学的伝達物質がシナプス後細胞の受容体に作用することによって行われる。この受容体に関する研究は従来は主として生理学および薬理学的方法によって行われてきたが,近年遺伝子工学的手法が導入されることによって飛躍的な発展をとげることになった。生理学,薬理学的手法による古典的な受容体の研究において,はやくから同一の活性物質に対する受容体のサブタイプへの分類が行われ,たとえばアドレナリン受容体はα型とβ型に,アセチルコリン(ACh)受容体はニコチン性とムスカリン性に分類されてきた。しかし遺伝子工学的方法により受容体を構成するサブユニットのcDNAが次々にクローン化されてみると,それぞれの受容体には古典的研究の予測をはるかに上回る分子的多様性のあることが明らかになった。これらの受容体分子の多様性は,中枢神経系が情報処理機能を果たすうえでどのような意義をもつのか。この点については未知の部分が多いが,本稿では分子的多様性の最も顕著なグルタミン酸受容体(glutamate receptor,以下Glu受容体と略す)を中心にして小論を試みることにする。
掲載誌情報