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文献詳細

雑誌文献

生体の科学46巻1号

1995年02月発行

文献概要

特集 神経科学の謎

神経組織の発達はどのように分子的に制御されているのか

著者: 村上富士夫1 白崎竜一1 玉田篤史1 勝丸博信1

所属機関: 1大阪大学基礎工学部生理学教室

ページ範囲:P.18 - P.23

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 神経組織の発達にはさまざまな過程の積み重ねが必要であるが,最も重要なものの一つが神経回路の形成である。神経回路形成にも多くの過程があり,それ自身きわめて複雑な現象であるが,その中でもっとも基本的な過程のひとつは正中交差の形成である。ヒトをはじめとする脊椎動物の神経系は,左右対称の構造を形成しているため個体の秩序だった制御,感覚の受容のためには左右両側からの情報の統御が不可欠であり,反対側への情報の伝達は脳の機能発現にとってもっとも根本的な事象である。
 交差性回路の形成の分子機構については,これまでは無脊椎動物を含む多くの材料を用いて研究が進められてきたが,近年,コラーゲンゲルを用いた培養法の導入などにより,哺乳類を用いた研究が大きく進展し,ケモトロピズム(chemotro-pism:この場合,拡散性因子による軸索伸長の誘導)の交差性回路形成における重要性が明らかにされつつある。そして昨年,脊髄のフロアプレート由来の拡散性化学誘引分子を同定したとの報告がされ,一挙に関心が高まった。さらに興味深いことに,フロアプレートによるケモトロピズムにも抑制的に働くものがあることが明らかになってきた。そこで本稿ではこれらの問題に関する最近の研究の展開に焦点を当てて紹介することにする。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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