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特集 神経科学の謎
シナプス機能は蛋白質燐酸化反応によってどのように調節されているのか
著者: 宮本英七1
所属機関: 1熊本大学医学部薬理学第一講座
ページ範囲:P.32 - P.36
文献購入ページに移動 脳は複雑に入り組んだ,しかも整然とした神経回路網を形成している。神経インパルスが神経終末に到達すると,シナプス部位において,化学伝達物質である神経伝達物質が放出され,後シナプス細胞に神経情報が伝達される。いわゆる古典的な神経伝達物質ならびに最近注目をあびているニューロペプチドは,前シナプス膜および後シナプス膜に存在する受容体を刺激し,細胞内にイオンやセカンドメッセンジャーを産生して,その作用を発揮している(図1)。生じたcAMP,cGMP,Ca2+,DG(ジアシルグリセロール)はそれぞれに特異的なプロテインキナーゼを活性化して,神経伝達物質の作用を仲介していると考えられている。
蛋白質燐酸化反応は,蛋白質合成が完成してから蛋白質に生ずる修飾反応の一つである。燐酸化反応はプロテインキナーゼ(PK),脱燐酸化反応はプロテインホスファターゼ(PrP)によって触媒され,両者は全く異なった酵素であるが,両反応は可逆的反応と考えられ,生体内の比較的進行の速い反応に関与することが可能と考えられている。他臓器に存在するいずれのPK,PrPの存在も確認されており,その数は両者合わせて数十種にも上る。上述の通り,神経伝達物質の受容体刺激によって生ずる活性物質がそれぞれに特異的なPKを活性化することから,シナプス機能に蛋白質燐酸化,脱燐酸化反応が深く関与していると想像することは突飛なことではない。
蛋白質燐酸化反応は,蛋白質合成が完成してから蛋白質に生ずる修飾反応の一つである。燐酸化反応はプロテインキナーゼ(PK),脱燐酸化反応はプロテインホスファターゼ(PrP)によって触媒され,両者は全く異なった酵素であるが,両反応は可逆的反応と考えられ,生体内の比較的進行の速い反応に関与することが可能と考えられている。他臓器に存在するいずれのPK,PrPの存在も確認されており,その数は両者合わせて数十種にも上る。上述の通り,神経伝達物質の受容体刺激によって生ずる活性物質がそれぞれに特異的なPKを活性化することから,シナプス機能に蛋白質燐酸化,脱燐酸化反応が深く関与していると想像することは突飛なことではない。
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