特集 プロテインホスファターゼ―最近の進歩
プロテインホスファターゼ1のイソフォームとその意義
著者:
水野佑亮1
菊池九二三1
所属機関:
1北海道大学免疫科学研究所生化学部門
ページ範囲:P.106 - P.112
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セリン/スレオニン残基に特異的な1型プロテインホスファターゼPP1は,プロテインホスファターゼ研究の中で最も古い歴史をもつもののひとつで,1960年代よりMerlevedeらにより精力的に研究がなされてきたが,その精製が難しく,長い潜伏の期間があった。ところが1980年代に至り,Merlevedeら,Fischerら,Cohenらが時を同じくしてその精製に成功するやPP1研究は急速に進展をみせた。その後,cDNAの解析により触媒サブユニットに複数種存在することがCohenらや長尾らにより報告された。一方,PP1には内因性の阻害性蛋白をはじめとするいくつかの調節サブユニットや調節蛋白が存在することがこれまでに報告されてきたが,その数は現在さらに増えつつある。その結果,PP1の機能やその調節,あるいは局在などが極めて精妙に制御されていることが明らかになった。このような背景のもと,PP1研究は次第に広がりを見せ,その生理的意義について,生化学や分子生物学はもとより,細胞生物学あるいは腫瘍学などの立場から多角的に研究がなされるようになった。本稿においては,このようなPP1研究の現況について,とくにイソフォームを中心に概説する。