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文献詳細

雑誌文献

生体の科学46巻2号

1995年04月発行

文献概要

特集 プロテインホスファターゼ―最近の進歩

神経系でのチロシンホスファターゼ発現とその意義

著者: 伊藤俊治1 岡田雅人1 中川八郎1

所属機関: 1大阪大学蛋白質研究所代謝部門

ページ範囲:P.135 - P.141

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 神経系細胞特有の分化・発生(終末分化,軸索・突起進展,シナプス形成,細胞死など),さらにはシナプス伝達,記憶,学習などの高次機能においても,蛋白質のチロシン残基のリン酸化反応が細胞内シグナル伝達過程に重要な役割を演じていることが明らかにされつつある。例えば,神経系特異的に発現している神経成長因子(Nerve Growth Factor:NGF)の受容体であるTrk,およびそのファミリーTrkB,TrkCなどはチロシンキナーゼ活性を有し,シグナルをチロシンリン酸化反応を介して伝えていることはよく知られている1)。また,非受容体型のチロシンキナーゼであるSrcファミリーキナーゼも神経系において高レベルで発現していることから,神経細胞の分化・発生・機能にある役割を担っていると示唆されてきた2,3)
 このようなチロシンリン酸化反応は,チロシンホスファターゼ(PTP)により制御され,適切な細胞機能調節が行われるが4),神経系特有の発生・分化・機能に関与するPTPは,その存在が見いだされつつあるものの,機能が十分理解されるまで至っていない。筆者らは,神経系特異的に発現しているPTPの検索を試み,これまでに3種の新しいPTPを単離し,その機能解析を進めている。本稿では,主にそれらの性質を紹介することによって,神経系におけるPTPの意義について考えてみたい。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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