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文献詳細

雑誌文献

生体の科学46巻2号

1995年04月発行

文献概要

特集 プロテインホスファターゼ―最近の進歩

胎生期脳のチロシンホスファターゼ

著者: 田川雅敏1 白沢卓二2

所属機関: 1千葉大学医学部生化学第一講座 2東京都老人総合研究所病態老化学研究系分子病理研究室

ページ範囲:P.142 - P.145

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 蛋白質のチロシン残基の脱リン酸化を担うチロシンホスファターゼは,細胞内刺激伝達系の各段階で作用すると考えられ,チロシンキナーゼと並んで重要な生物学的特性を有すると推察されている。しかし残念ながらこれを実証する具体的な事実に乏しいのが現状である。一方,その遺伝子の塩基配列はすでに多くの例で明らかにされており,推察されるアミノ酸配列から,高分子量の受容体型と低分子量の細胞質型にチロシンホスファターゼは分類される1)。また約300個のアミノ酸からなる酵素活性を有するホスファターゼドメインの存在も知られている2)
 神経細胞においても多くの生理的反応が蛋白質のリン酸化によって制御されると考えられており,これを支持するように神経細胞ではチロシンキナーゼが豊富に分布している。またショウジョウバエで得られている変異株の解析から,チロシンキナーゼの機能についての研究が進められている3)。しかし神経細胞におけるチロシンホスファターゼの生物学的意義の解明は遅れているばかりか,その発現についても明らかにされている例は多いとはいい難いのが現状である。われわれは神経細胞の増殖と分化との接点を捜る目的で,胎児脳のチロシンホスファターゼの解析を開始したが,本稿では現在まで知られている胎児神経細胞における同酵素の発現様式と,最近われわれが単離しえた胎生期中枢神経に発現するチロシンホスファターゼ遺伝子について解説したい。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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