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特集 プロテインホスファターゼ―最近の進歩
プロテインホスファターゼの阻害剤と活性化剤
著者: 菅沼雅美1 藤木博太1
所属機関: 1埼玉県立がんセンター研究所
ページ範囲:P.162 - P.169
文献購入ページに移動 オカダ酸がプロテインホスファターゼ阻害剤として最初に発表されたのは1987年である。しかし,オカダ酸が黒磯海綿から分離され,構造が決定されたのは1981年のことで,ハワイ大学化学教室Scheuer教授の研究室,橘和夫博士(現東大教授)の貢献による。化学教室から1ブロック離れた薬理学教室の柴田章次教授は,オカダ酸の添加はCa++がなくても平滑筋線維の収縮を起こすことを1982年に発表されていた。当時名城大学平田義正教授および名古屋大学山田静之教授から「オカダ酸は面白い化合物だよ」とオカダ酸をいただいて,発癌プロモーションの研究を始めたのは1985年であった。その当時,オカダ酸がプロテインホスファターゼ阻害剤であるとのデータは発表されていなかった。柴田教授の論文から,オカダ酸の作用にはCa++非依存性のプロテインキナーゼの活性化が,あるいは,プロテインホスファターゼの阻害が関与しているとわれわれは推測していた。オカダ酸およびディノフィシストキシン-1(35-メチルオカダ酸)がマウス皮膚で12-O-tetradecanoylphorbol-13-acetate(TPA)と同等に強く,また,TPAと異なった機構で発癌プロモーション活性を誘導することを,われわれは1988年Proc. Natl. Acad. Sci.とJpn. J. Cancer Res.にそれぞれ発表した。
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