特集 プロテインホスファターゼ―最近の進歩
平滑筋収縮制御へのプロテインホスファターゼの役割
著者:
藤田秋一1
村橋哲也1
北澤俊雄1
所属機関:
1
ページ範囲:P.170 - P.175
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現在,一般的に認められている基本的な平滑筋収縮調節機構1,2)(図1)は細胞内Ca2+濃度の上昇に伴い,Ca/カルモジュリン(CaM)依存性ミオシン軽鎖キナーゼ(MLCK)がミオシン軽鎖(MLC)をリン酸化することである。このリン酸化によりミオシン頭部はアクチン線維との間にクロスブリッジを形成し,そのATP分解反応の際に生ずるエネルギーを利用して平滑筋を収縮させる。逆に,細胞内Ca2+濃度の減少によって,Ca/CaM複合体のはずれたMLCKの活性は減少する。そのため,リン酸化MLCを脱リン酸化するミオシン軽鎖ホスファターゼ(MLCP)の相対的活性は高まり,MLCは脱リン酸化され,その結果ミオシン頭部はアクチン線維から離れ,筋は弛緩する。この古典的リン酸化機構においては,Ca2+の増減は活性化MLCK数の増減,すなわちMLCK活性の速度定数を増減することになる。一方,脱リン酸化酵素MLCPに対しては特に制御機構がなく,その活性速度定数は常に一定に保たれていると仮定されていた。この考え方からすると,MLCのリン酸化量はMLCKの活性変化によってのみ調節され,そのリン酸化のCa2+感受性は変化しないことになる。よって,高いリン酸化量を維持するためには細胞内Ca2+濃度を高く維持し,MLCKを活性化し続けなければならない。