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特集 ライソゾーム
保護タンパク質―ライソゾーム酵素の保護作用を示す多機能性糖タンパク質
著者: 伊藤孝司1 桜庭均1
所属機関: 1東京都臨床医学総合研究所臨床遺伝学研究部門
ページ範囲:P.230 - P.234
文献購入ページに移動I.ガラクトシアリドーシスにおける保護タンパク質の欠損
ライソゾーム内には多数の酸性加水分解酵素とそれらの補助因子が存在し,相互の協調作用により細胞内外のさまざまな生体分子の分解代謝が行われている。しかしこれらの酵素が遺伝的に欠損すると,分解反応に支障をきたし,細胞内に基質が過剰に蓄積する,いわゆるライソゾーム病が発生する。
1970年代に従来の単一酵素欠損症とは異なり,遺伝子座の異なるβ-ガラクトシダーゼ(β-galactosidase,以下β-Galと略す)とノイラミニダーゼ(neuraminidase,以下Neurと略す)の両ライソゾーム酵素活性が同時に欠損する常染色体劣性遺伝病が見い出され,ガラクトシアリドーシス(galactosialidosis,以下GSと略す)と名づけられた1)。この新しい型の疾患の研究から,ライソゾーム内にはβ-GalとNeurの酵素活性の安定化や活性発現に必須な第3のタンパク性因子が存在することが明らかになり,保護タンパク質(protective protein,以下PPと略す)と命名された2)。本稿では,このPPの構造と機能に関する知見を最近の筆者らの研究成果も含めて紹介したい。
ライソゾーム内には多数の酸性加水分解酵素とそれらの補助因子が存在し,相互の協調作用により細胞内外のさまざまな生体分子の分解代謝が行われている。しかしこれらの酵素が遺伝的に欠損すると,分解反応に支障をきたし,細胞内に基質が過剰に蓄積する,いわゆるライソゾーム病が発生する。
1970年代に従来の単一酵素欠損症とは異なり,遺伝子座の異なるβ-ガラクトシダーゼ(β-galactosidase,以下β-Galと略す)とノイラミニダーゼ(neuraminidase,以下Neurと略す)の両ライソゾーム酵素活性が同時に欠損する常染色体劣性遺伝病が見い出され,ガラクトシアリドーシス(galactosialidosis,以下GSと略す)と名づけられた1)。この新しい型の疾患の研究から,ライソゾーム内にはβ-GalとNeurの酵素活性の安定化や活性発現に必須な第3のタンパク性因子が存在することが明らかになり,保護タンパク質(protective protein,以下PPと略す)と命名された2)。本稿では,このPPの構造と機能に関する知見を最近の筆者らの研究成果も含めて紹介したい。
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