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文献詳細

雑誌文献

生体の科学46巻4号

1995年08月発行

文献概要

特集 ストレス蛋白質

分子シャペロンとしてのストレス蛋白質

著者: 宮田愛彦1

所属機関: 1東京都臨床医学総合研究所細胞生物学研究部門

ページ範囲:P.308 - P.313

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I.分子シャペロンとは
 酵素を高濃度のUreaで完全に変性させた後,Ureaを希釈すると自然に蛋白質が巻き戻り,元と全く同じ活性をもつ酵素が“自動的に”できる,というAnfinsenの古典的な実験以来,蛋白質のアミノ酸配列さえ決めれば機能的立体構造は一義的に決まるのだ,と暗黙のうちに考えられてきた。その間にDNAのクローニング・シーケンスの技術が爆発的に発達したこともあって,ともかく配列さえ決めてしまえばそれで蛋白質の話のほとんどは解決してしまうかのような風潮すらあった。実際には多くの蛋白質は変性させた後に変性剤を除いても元の構造に戻らず,不活性なアグリゲートを形成する。また,大腸菌で発現させた蛋白質が必ずしも活性を持つと限らないことや,細胞生物学的知見の蓄積によって,むしろ多くの蛋白質では機能的な立体構造は自動的に決まるものではなく,細胞内のさまざまな因子の助けを借りて初めてできるのだということがはっきりしてきた。このような介助を行う蛋白質を“分子シャペロン”という。
 シャペロンとは,もとは若い女性が社交界にデビューする際に介添をする年上の女性のことを指す。分子シャペロンという言葉は,核内でヌクレオソームの形成を介助するヌクレオプラスミンに対して付けられたのが最初である1)。ヌクレオプラスミンが存在しないと,ヒストンとDNAとが非特異的に凝集して正常なヌクレオソーム構造が形成されない。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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