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特集 ストレス蛋白質
文献概要
近年,ストレス蛋白質(Heat Shock Protein:HSP)の機能の多様性がつぎつぎと明らかになり,細胞生物学や分子生物学の分野のみならず臨床の分野でもその重要性が注目されている。多くの感染症において,病原体の主たる抗原がストレス蛋白質そのものであることが明らかになり,ストレス蛋白質の発現の有無が病原性を左右する因子であるという報告がある。一方では,この蛋白質は宿主の免疫応答を誘導することにより感染防御の成立に寄与する場合があることも知られている(表1)。今後,寄生体と宿主細胞の双方に発現する各々のストレス蛋白質の機能的役割をさらに詳細に解明することが,感染防御機構を把握する上で重要と思われる。単細胞の寄生虫である原虫は他の病原体には見られない,原虫特有の複雑な生活史あるいは宿主の免疫系からの巧みなエスケープ機構を備えている。したがって原虫感染時にはストレス蛋白質は特異的な機能と発現様式を持つ。本稿では,原虫感染における宿主,原虫の両者におけるHSPの役割をわれわれの知見を併せて紹介したい。
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