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文献詳細

雑誌文献

生体の科学46巻6号

1995年12月発行

文献概要

特集 病態を変えたよく効く医薬

抗高血圧薬:Ca拮抗剤―開発の歴史

著者: 中山貢一1

所属機関: 1静岡県立大学薬学部薬理学教室

ページ範囲:P.678 - P.683

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 Ca拮抗薬の抗高血圧薬としての世界的広がりは,歴史的には抗狭心症薬,あるいは抗不整脈薬としてのそれに比較すればはるかに短い。年代学的にはHeidlandら(1962)1)による,腎疾患を有する高血圧症患者におけるベラパミル(イプロベラトリル)の急性的降圧効果の報告から始まる。ニフェジピンに代表される1,4-ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬が特異的な冠動脈拡張と末梢血管拡張作用による極めて明確な血圧降下を示すことは,薬理学研究において橋本ら(1971,1972)2,3)により極く初期において明らかにされた。本邦では萩野(1968)4)によるベラパミルの抗高血圧療法についての報告,また,本態性高血圧症に対するニフェジピンの降圧作用の報告が村上らによってなされたのは1972年のことである5)。にもかかわらず,高血圧治療に関してのガイドライン,たとえば,JNC(米国国内委員会)とWHO/ISH(国際高血圧学会)がCa拮抗薬を一次選択薬の一つに公式に加えたのはようやく1988-1989年である。なぜ,そのようなことが起こったのかは日本と世界の研究のあり方や薬の歴史という面からも思い起こす価値があろう。
 本小論では,Ca拮抗薬の抗高血圧薬としての位置付けにわが国の研究者が世界に先駆け,先達として努力したその足跡をさぐると共に,来るべき世紀における新薬開発のあり方を考えてみたい。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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