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文献詳細

雑誌文献

生体の科学46巻6号

1995年12月発行

文献概要

特集 病態を変えたよく効く医薬

高脂血症治療薬:HMG-CoA還元酵素阻害剤―開発の歴史

著者: 辻田代史雄1

所属機関: 1三共㈱第一生物研究所

ページ範囲:P.689 - P.694

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I.動脈硬化の危険因子:コレステロールとその代謝
 動脈硬化が原因となる虚血性心疾患は,心筋梗塞や突然死を招き,わが国でも人口の高齢化や食事の欧米化に伴い年々増加している。虚血性心疾患の三大危険因子は,高コレステロール血症と高血圧と喫煙であるが,なかでも高コレステロール血症が動脈硬化の発症および進展に重要な役割を担っていることを,フラミンガム研究1)などの多くの疫学調査結果が示している。このような観点から,今までに血漿コレステロールを低下させるための多くの薬剤の開発や治療法の試みがなされてきた。
 図1にコレステロール代謝の概略を示すが,その主要臓器は肝臓であり,肝臓では食事から小腸を介して吸収されるコレステロールと,自ら生合成するコレステロールと体内循環より戻ったコレステロールとから,主に小腸から脂質を吸収するための胆汁酸を合成分泌し,また他の組織にコレステロールを運搬するためのリポタンパク質を合成分泌している。このように生体のコレステロールは,食事からの吸収と生合成によって賄われており,主に胆汁酸として排泄されている(胆汁酸は95%が再吸収されるが残り5%は糞便中へ排泄される)。したがって,コレステロールを低下させるには,小腸からの吸収の抑制,生合成の抑制および胆汁酸の再吸収抑制(排泄促進)が,論理的に考えられる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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