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文献詳細

雑誌文献

生体の科学46巻6号

1995年12月発行

文献概要

連載講座 新しい観点からみた器官

胸腺―免疫系と神経・内分泌系の接点にあるリンパ組織

著者: 広川勝昱1

所属機関: 1東京医科歯科大学医学部感染免疫病理学教室

ページ範囲:P.738 - P.745

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 胸腺は横文字ではthymusというが,それは香草のタイムに由来する。牛や羊の胸腺がタイムの香りがすることからきている。事実,胸腺は英語ではsweetbreadsといわれ,さまざまな料理方法があるくらいである。歴史的には既に2000年前のガレノスが,胸腺について明確な記載をしており,特にそれが加齢に伴い萎縮することを指摘している。胸腺の構造については,Moellendorfの組織学の教科書シリーズのThymusの項目(Bargmann,W.,1943)に詳しく記載されているが,それは内分泌器官の一つとして扱われている。それにはヒトの胸腺に関する萎縮の過程(図1),ハッサル小体の構造,血管分布など克明に記載されている。
 しかしその胸腺の本来の機能である免疫機能が明らかになったのは,1960年代に入って,オーストラリアのMiller1)が行った新生仔マウスの胸腺摘出実験によることは余りにも有名である。実際にこの実験を契機にして,免疫学の流れが大きく変わったといっても過言ではない。それまでの免疫学は抗血清,抗体の体液性免疫学であったが,胸腺の免疫学的機能の発見により,T細胞による細胞性免疫の概念が発達してきたのである。それは体液性免疫の担当細胞であるB細胞の概念の確立,T細胞とB細胞の細胞間相互作用,T細胞による免疫機能調節,更に分子遺伝学的手法を駆使した近代免疫学につながってきたといえる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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