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特集 細胞分化
組織発生における細胞間基質の役割―遺伝子操作マウスにおける変化
著者: 坂倉照妤1
所属機関: 1三重大学医学部病理学第一講座
ページ範囲:P.214 - P.219
文献購入ページに移動 1953年にグロブスタインはマウス顎下腺を上皮と間充織に分けて培養する技術を開発し,両組織をいろいろな組み合わせにした実験で,上皮だけでは形態形成を行えず間充織の助けが必要であることを明らかにした1,2)。以来この系を使って,ほかの組織でも同様の研究が行われ,上皮と間充織の相互作用が形態形成には不可欠であることが次々に明らかにされた。ただ,多くの実験結果は間充織が許容的な機能を持つことを示したにとどまり,組織形成においては上皮があくまでも主役として優位性を示していた。しかし少数例ではあるが,間充織が上皮の運命まで変えてしまうという教示的な役割りを示したものもあった。ニワトリの羽と鱗3),ニワトリの消化管4),マウスの膀胱と尿生殖洞5),マウスの脳下垂体と唾液腺6)の組み合わせである。これらの実験は間充織が上皮の形どころか機能をも変えてしまい,明らかに間充織が上皮運命の決定権をにぎっている。つまり組織発生過程で間充織が単に上皮の発育を支え,助けているだけではなく,積極的に上皮の分化の方向を決める信号を送っていることを示しており,多くの研究者はその信号情報の実体と伝達機構について大きな興味を持っている。
癌も含めて上皮細胞と間充織の相互作用を説明する分子機構は大きく三つに分けられる(図1)。
癌も含めて上皮細胞と間充織の相互作用を説明する分子機構は大きく三つに分けられる(図1)。
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